中学生の矯正について
中学生の矯正歯科治療とは
全ての歯が永久歯に生え変わり、新たに第二大臼歯(12歳臼歯)も生えた段階である中学生の時期の治療は、「第二期治療」にあたります。
混合歯列期の「第一期治療」から当院で継続して(あるいは経過観察で)治療を行っていた患者さんは、この第二期治療で最終的な歯並び・かみ合わせを作り上げます。
第一期治療を行わず、この時期から治療を開始した場合は、成人矯正と同様の治療内容になります。
中学生で治療を開始するメリット
永久歯の歯列は完成しても、この時期はまだまだあごの骨やお顔の骨格は成長途中です。頭蓋骨についた上あごは、成長発育は小学生のうちにほぼ完了しますが、下あごの骨は手足と似た種類の骨なので、身長が伸びるのと同じく一般的に女子では15歳くらいまで、男子では18歳くらいまで成長が続きます。
中学生の矯正歯科治療は、永久歯列が完成してあごの発育方向も把握できる上、歯周組織の新陳代謝が良く、歯もスムーズに動くことから、治療を始める上で良いタイミングと言えます。
また、第二大臼歯のかみ合わせは歯並び全体に影響を及ぼすことが多く、その調整をしながら治療を始められることも、この時期から治療を開始するメリットの一つです。
高校生の矯正について
高校生の矯正歯科治療とは
混合歯列期に当院で「第一期治療」を行い、経過観察の後に高校生で治療を再開する場合は「第二期治療」となり、ここで最終的な歯並び・かみ合わせを作ります。高校生で初めて矯正歯科治療を行う場合は、成人矯正と同様の治療内容になります。
10代後半は顎骨の成長も落ち着き、人によっては第三大臼歯(親知らず)が生えてきて、歯並びが少し変わってきたと感じる方もいるでしょう。高校生になると自分自身で「歯列矯正がしたい」と思う方が増え、その分治療への理解も深く、心身共にスムーズに治療が進む傾向にあります。
高校生で治療を開始するメリット
高校生は活動の幅も広がり、部活動や受験勉強・アルバイトなど忙しく過ごしている方も多くなりますが、学校行事や定期試験のスケジュールは年間で決まっているため、月に一度の通院はまだしやすい時期なのではないでしょうか?
特に、ここ新潟県の皆さんの中には、高校卒業後に他県に進学される方もいらっしゃると思いますので、治療期間の長い矯正治療は計画的に進めていくことをお勧めします。
10代後半は、歯や顎骨、唇や口腔周辺の筋肉などは大人と同程度にまで成長しますが、まだまだ歯周組織の新陳代謝は活発です。従って、大人と同様の治療方法を用いることが可能な上、歯も動きやすいという、とても効率の良い治療ができる年代になります。
中高生の矯正歯科治療例
出っ歯
こちらの患者さんは上の前歯が大きく出ていることで、口を閉じると上唇が尖っているように見えていました。
また、歯の真ん中がずれていて、正中線(上下の歯並びの中心線)も一致していませんでした。
上唇が尖っている顔貌は幼く可愛らしい印象になり、男子中学生としては矯正歯科治療で改善したい部分かと思います。
【矯正治療前】
【矯正治療後】
精密検査の結果、歯を並べるスペースが足りないことから、小臼歯の抜歯と親知らずの抜歯により、口元を後方へ下げて、かみ合わせを作り直す治療方針となりました。
治療後は、正中線がほぼ顔の中心線上にある歯並びに整い、口元は後退して顔全体に調和する顔貌となりました。
見た目の印象もガラリと変わり、精悍な顔つきとなりました。
【診療情報】
■主訴
前歯が出ている。歯の真ん中がずれている。
■診断名あるいは症状
上顎前突・偏位咬合
■年齢
12歳
■治療に用いた主な装置
マルチブラケット装置
■抜歯部位
左右上の第一小臼歯、右下の第二小臼歯、上下左右の第三大臼歯
■治療期間
2年8か月
■治療費概算(自費)
約80万円
■リスク・副作用
- 個人差はありますが、矯正装置を付けた当初は痛みや不快感があります。
- 歯を動かす際に歯根吸収や歯肉退縮が起こる場合があります。
- 矯正歯科治療中は歯磨きがしにくくなるため、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。
- 保定装置をきちんと使用しないと、後戻りが生じやすくなります。
中高生の皆さんへ 矯正歯科治療Q&A
中高生になり、幼い頃には何とも思わなかった歯並びや口元が気になるようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
矯正歯科治療をしてみたいなと思う皆さんは、どのようなことが心配ですか?
ここでは、よくいただく質問についてご説明します。
矯正歯科治療は痛いですか?
個人差はありますが、初めて矯正装置を装着した時が一番痛かったという患者さんが多いです。また、歯を動かす期間は月に一回装置の調整を行いますが、その時も初回ほどではありませんが、痛みや鈍痛を感じることもあると思います。
矯正歯科治療の痛みの主な原因は、歯が歯槽骨の中で動くことによる炎症と、一時的に歯の神経や血管が圧迫されることによる血行不良、また、装置が内頬に触れることで口内炎ができることなどが挙げられます。
これはどれも一時的な痛みで、数日から1週間も経たないうちにスッキリと消えていきます。
痛みがあると分かっていながら治療を始めることは怖いことかもしれませんね。
ですが、矯正歯科治療は全世界で小さなお子さんも行っている治療です。痛みが強い時は市販の痛み止めも服用できますので、あまり過度に心配せずに、リラックスして治療に臨んでください。
治療期間はどのくらいですか?
歯を動かす期間は、症状や抜歯の有無にもよりますが、一般的には2~3年前後となります。この間は月に1度の通院となります。
装置を外した後は、約2年の保定観察期間を要します。この間は約3~4か月に1度の通院となります。
定期試験や行事など学校のスケジュールは年間で決まっていて、また、塾や習い事も大体曜日が決まっていると思いますので、大人よりも比較的計画が立てやすいのがこの時期に治療を行うメリットでもあります。
特に高校生の皆さんは、卒業後に他県に進学することもあるかもしれません。歯の移動(月に1回通院・2~3年前後)はできるだけ親元にいる間に完了させたいなど、治療スケジュールのご希望もあると思いますので、ぜひお早めにご相談ください。
部活(吹奏楽部や運動部)と両立できますか?
矯正装置を付けてオリンピックに出場していた選手もいましたが、近年、スポーツ選手の矯正歯科治療は珍しいものではなくなってきました。
野球部、テニス部、水泳部などの皆さんは、装置の影響を心配する必要はほとんどありませんが、柔道部やラグビー部など、コンタクトスポーツの場合は不安な方もいらっしゃるかと思います。少しでも心配なことがあれば、対処できることもありますのでご相談ください。
吹奏楽部の場合は、運動部よりもお悩みは深いかもしれませんね。「矯正歯科治療をしても楽器の演奏は続けられますか?」という質問をよくいただきます。
管楽器を演奏する方の中には、歯並びや顎関節症に悩んでいる方も多く、最近ではプロの演奏家や音大生でも矯正歯科治療を行う方が増えてきています。従って、吹奏楽をしていたら治療できないということはありません。
ただし、初めて矯正装置をつけた時は演奏がしにくいと感じる方が多いのも事実であり、大切なコンクールや演奏会の直前は避けてスケジュールを立てたほうが良いと思います。
装置をつけた口腔環境に慣れるのは個人差があり、一概には言えませんが、木管楽器のほうが比較的早く演奏に慣れるケースが多く、金管楽器の場合は、トランペットよりもチューバのようなマウスピースが大きい楽器のほうが影響は少ないようです。
部活動は学校生活の中でとても重要な位置づけにあると思います。皆さんの立場に立って一緒に考えていきたいと思っていますので、是非一度ご相談ください。
受験に差し障りがありませんか?
矯正歯科治療が受験に直接影響することは考えにくく、実際、中学や高校3年生で治療をしている方も多くいます。
既に矯正歯科治療に慣れている時期であればほとんど問題はないかと思います。差し障りがあるとすれば、初めて装置をつけた時や抜歯をした時など、治療開始時期の痛みがある時でしょう。
風邪や腹痛などの体調不良と同じで、歯の痛みや不快感などがあると勉強に集中するのは大変ですので、やはり受験の季節を避けて治療を開始することをお勧めします。
入試本番が近づいてきましたら、通院いただく間隔を考慮し、装置の調整の際は歯に加える力を弱めて患者さんの負担が軽くするなど、できる限りのサポートをいたします。